建築基準法とは?オフィスづくりの注意点や違反リスクを解説

建築基準法とは?オフィスづくりの注意点や違反リスクを解説

オフィスの賃貸借契約をお考えならば、建築基準法の内容を知ることが大切です。
しかし、建築基準法とはどのようなものか、実際にその内容をご存じの方は少ないかもしれません。
そこで今回は、建築基準法とはどのようなものなのか、建築基準法を踏まえたオフィスづくりの注意点と違反状態のオフィスに入居するリスクを解説します。

建築基準法とは

建築基準法とは

建築基準法とは、建物に関するルールを定めた法律です。
オフィスの賃貸借契約の前には、具体的な内容をチェックしておきましょう。

建築基準法の概要

建築基準法とは、1950年につくられた法律で、建物に求められる最低限のルールを定めたものです。
建築基準法には、無秩序な建築ラッシュなどにより生命や財産といったものがおびやかされることがないよう、人間を守る役割があります。
建築基準法が実際に規制しているのは、建物の構造・用途・設備などです。

建築基準法が定める内容

建築基準法によって規制されているのは、土地に対する建物の占める割合を示す建ぺい率です。
また、何階建てまで建築して良いかを示す容積率も、建築基準法によって規制されています。
さらに、絶対高さ制限・隣地斜線制限は、高い建物が周辺に悪い影響を与えないよう定めたルールです。

耐震基準

建築基準法のなかでも重要とされているのが、どのくらいの揺れに耐えられるかといった耐震性です。
建築基準法は1950年につくられてから幾度も改正を重ねていますが、1981年におこなわれた耐震基準に関する改正は大きなポイントといえます。
1981年の建築基準法改正前の耐震基準は旧耐震基準と呼ばれ、震度5程度の揺れで軽微な損傷のみで済むことを最低基準としています。
一方で、1981年の建築基準法改正後の耐震基準を新耐震基準といい、こちらは震度6~7程度の揺れでも倒壊しないことが最低基準です。
具体的には、1981年6月1日以前に建築確認を受けている建物は旧耐震基準が適用されていて、それより後に建築確認を受けた建物は新耐震基準が適用されています。

建築基準法以外のルール

オフィスでは、建築基準法以外に意識したい法律がいくつかあります。
まず、火災などの被害を抑制するとともに、地震といった災害が発生した場合に避難の導線を確保し、被害を最小限に抑えるための消防法が、オフィスで大切なルールです。
また、オフィスで働くスタッフの安全と健康を確保し、快適に働ける環境をつくるために定められているルールが、労働安全衛生法です。
似たものに事務所衛生基準規則がありますが、こちらは事業者に対して快適な環境を維持管理するよう求めるもので、具体的な環境の基準が記載されています。

建築基準法を踏まえたオフィスづくりの注意点

建築基準法を踏まえたオフィスづくりの注意点

建築基準法とは、建物の高さや耐震性などについて定めた法律です。
ここからは、実際のオフィスづくりを意識しながら、注意点をチェックしましょう。

廊下の幅

オフィスにおける廊下の幅について、建築基準法は1.2~1.6mを確保することを求めています。
具体的には、廊下の片側に部屋がある場合ならば1.2 m、廊下の両側に部屋があるならば1.6 m以上の横幅が必要です。
ここで注意したいのが、廊下と通路の違いです。
建築基準法が横幅を定めている廊下とは、オフィスの外にある共用の廊下となります。
オフィス内にあるデスクとデスクのあいだの通路は、建築基準法による規制対象ではありません。
一般的なオフィスであれば、外の廊下に手をくわえることはありませんが、廊下のレイアウト変更をする場合には、横幅の確保に注意しましょう。

火災時に消防隊が侵入する窓

オフィスビルを外から見ると、赤い逆三角形の印がついている窓があります。
これは、建築基準法によって消防隊侵入口と定められた窓です。
オフィスづくりでは、この消防隊の侵入口をふさがないことが注意点です。
具体的には、赤い逆三角形の印がついた窓のそばに重い荷物を積むことは、安全面から禁じられています。
万が一、火災が発生した場合、スムーズな消火活動がおこなえるよう、消防隊の侵入口周辺に荷物を置かないようにしてください。

排煙窓

赤い逆三角形の印がついた消防隊侵入口と似たものに、排煙窓があります。
排煙窓とは、オフィスの上部にある煙を逃がすための窓です。
排煙窓は消火活動のためのものではありませんが、火災の被害を拡大させないためにつくられています。
オフィスづくりでは、この排煙窓から差し込む光がまぶしいからといってふさいではいけません。
火災発生時に煙がスムーズに排出されるよう、空気の流れをさえぎるものは置かないようにしましょう。

建築基準法に違反するオフィスに入居するリスク

建築基準法に違反するオフィスに入居するリスク

建築基準法の内容を知らずにオフィスの賃貸借契約を結んだ場合、意図せず建築基準法に違反しているオフィスに入居してしまうかもしれません。
こうしたオフィスに入居した場合、どのようなリスクがあるか見てみましょう。

違法建築とは

建築基準法に違反している建物として挙げられるのが、違法建築です。
違法建築とは、建築基準法やそのほかのルールに反した状態の建物を指します。
違法建築と聞いて、耐震性が十分ではないなど危険度の高い状態の建物を思い浮かべるかもしれませんが、実際の違法建築の内容はさまざまです。
具体例として、適切な申請なしに増改築をおこなったもの・建築許可を受けた用途とは違う用途で使っているものが挙げられます。
また、登記をおこなっておらず、不動産登記法違反の状態であるものも違法建築です。
建物の建築前・建築中・建築後にはそれぞれ検査があり、このなかで違法建築になることはほとんどありません。
建築後に建物を使用するなかで、知らないうちに違法状態になることが多いと考えられます。

既存不適格とは

違法建築と似たことばに、既存不適格があります。
既存不適格とは、建てた時点では違反ではないものの、法律の改正によって新しいルールに適合できなくなった建物のことです。
基本的に、建築基準法は規制が厳しくなることがあっても、規制が緩められることはありません。
そのため、時間の経過とともに改正される建築基準法の基準を満たせない建物が出てきます。
こうした既存不適格の建物は、違法建築とは区別され、安全上問題がある場合には是正勧告を受けます。

違法建築・既存不適格のオフィスに入居するリスク

違法建築・既存不適格のオフィスに入居すること自体は、罰則の対象ではありません。
違反状態であることを知らずに入居した場合はもちろんのこと、違反状態にあることを知って入居したとしても同様です。
ただし、違法建築・既存不適格であることが理由で周囲に危険がおよぶ場合には、建物の使用禁止・建物からの強制立ち退きなどの措置がとられるリスクがあります。
入居したオフィスが使用禁止になったり、強制立ち退きになったりした場合、ビジネスを中断しなければならなくなります。
また、違法建築・既存不適格のオフィスでは、違反部分について改善しなければ、新たに増改築は認められません。
そのため、入居したオフィスが違法建築・既存不適格の場合には、改装工事ができないことがあります。

リスクを回避する方法

オフィスの賃貸借契約前には、重要事項説明がおこなわれます。
重要事項説明のなかには、違法建築・既存不適格についての項目がありますので、チェックすることが大切です。
また、周辺の似た物件と比較して賃料が安すぎる場合には、違法建築・既存不適格の可能性があります。
さまざまな点から違法建築・既存不適格のリスクを回避できますので、賃貸借契約前に確認してみてください。

まとめ

建築基準法とは、建物の構造・用途・設備などについて定めた法律です。
建築基準法を踏まえてオフィスづくりを進める場合、廊下の幅の確保や消防隊侵入口と排煙窓をふさがないことなどが注意点となります。
建築基準法・既存不適格のオフィスに入居しても罰則の対象にはなりませんが、建物の使用禁止・立ち退きといったリスクがあります。