オフィスのレイアウトに関わる消防法とは?義務や気をつけるべき点を解説

オフィスのレイアウトに関わる消防法とは?義務や気をつけるべき点を解説

オフィスのレイアウトを計画する際、もっとも重要なのは法令遵守です。
法律に沿わないレイアウトでは、建物が違法とされてしまい、単に「知らなかった」と言うだけでは問題が解決しません。
とくに重要なのが消防法です。
本記事では、消防法とはなにか、消防法で義務付けられているものやオフィスのレイアウトで気をつけるべき点について解説します。

オフィスのレイアウトに関わる消防法とは?

オフィスのレイアウトに関わる消防法とは?

オフィスのレイアウトを見直す際には、安全性を最優先に考える必要があります。
また、現在のオフィスが法令に適合しているかどうかも確認することが大切です。
違反がないかをチェックし、必要に応じて改善をおこなうと、安全で快適な職場環境を保つことができます。

消防法とは

消防法とは、建物や施設における火災の発生を防ぎ、万が一火災が発生した場合でも被害を最小限にとどめるために整備された日本の法律です。
1948年に制定され、その後も社会状況や技術の進歩に合わせて改正がおこなわれてきました。
目的は人命や財産を守ることであり、国全体としての危機管理体制を強化する役割を担っています。
具体的には、建物の用途や規模、収容人数などに応じて、消火設備や警報設備、避難設備などの設置基準を定め、関係者に維持管理を義務付けることで火災のリスクを低減させています。

消防法が規定する主な設備

消防法が規定する主な設備は、火災の発生を早期に知らせる火災報知器、初期消火のための消火器や屋内消火栓設備、煙や火炎の拡散を防ぐ防火シャッターなどです。
規模が大きい建物や不特定多数の方が利用する施設では、スプリンクラー設備の設置義務が生じる場合もあります。
これらの設備は、法令によって設置基準が厳しく定められており、くわえて定期的な点検や修理が義務付けられます。
オフィスの賃貸借契約を検討する際にも、ビルやオフィススペースがこうした消防設備の基準を満たしているか、どのように維持管理がおこなわれているかをチェックすることが重要です。

建物の管理体制に関する規定

一定規模以上の建物や事業所には、防火管理者や消防計画の作成が義務付けられ、避難訓練や設備点検などの実施を通じて日常的な危機管理が推進されます。
防火管理者は、建物内の消防設備の状態を監視し、従業員や来訪者に対して避難経路を周知するなどの責務を負います。
とりわけオフィスビルにおいては、テナントが複数存在するケースが多いため、ビル全体の防火管理体制やテナント同士の連携も重要なポイントです。
消防法を遵守していない建物は、法的な制裁を受けるだけでなく、火災発生時に甚大な被害が及ぶ可能性が高まります。

オフィスにおいて消防法で義務付けられているものとは?

オフィスにおいて消防法で義務付けられているものとは?

オフィスを新たに借りる際、あるいは既存オフィスを運用するうえで知っておきたいのが、消防法によって義務付けられている各種の対策です。
ここでは主に以下の3つに分けて解説します。

①消防設備の設置義務

消防法では、建物の用途や規模、収容人員などによって、必要となる消防設備の種類や数が定められています。
オフィスの場合も、火災を早期に発見し被害を最小限に抑えるために、以下の設備が必要となるケースが多いです。
火災報知器
火災の発生をいち早く感知し、警報を鳴らすことによって関係者に避難を促す設備です。
オフィスのフロアごと、部屋ごとに設置が義務付けられる場合があります。
消火器
初期消火を目的とし、オフィスの面積や構造によって本数や設置場所が決まります。
見やすい場所・誰でも操作しやすい高さで設置するなど、使いやすさにも配慮が必要です。
スプリンクラーや屋内消火栓
大規模なオフィスや高層ビルでは、スプリンクラー設備や屋内消火栓設備の設置が義務付けられるケースがあります。
こちらも建物の構造や規模によって要件が細かく定められています。
いずれの設備も法令に基づいた設置・点検が必要であり、定期的なメンテナンスを怠ると罰則の対象となる場合もあるため注意が必要です。

②防火管理者の選任

消防法では、一定規模以上の事業所や建物を管理する場合、防火管理者の選任が義務付けられています。
オフィスビルの1テナントであっても、従業員数や床面積などの要件を満たすと選任が必要となることがあります。
防火管理者の主な役割は以下のとおりです。

●消防計画の作成・運用
●消防設備の設置・維持管理のチェック
●消防訓練や避難訓練の実施
●従業員や来訪者への防火に関する指導・周知


防火管理者になるには、法令で定められた資格要件を満たし、所定の講習を修了する必要があります。
オフィスビル全体の管理をおこなっている場合は、ビルオーナーや管理会社が防火管理者を選任するケースが多いです。
ただし、複数テナントが入居している場合はテナントごとにも必要となるケースがありますので、入居前に確認しておくことが大切です。

③消防計画の作成・届出

オフィスでは、消防計画の作成と消防署への届出も義務化されています。
消防計画とは、火災を含む緊急事態が発生した際にどのように対応し、人命や財産を守るかをまとめた手順書のようなものです。
消防計画はオフィスの規模やレイアウトに応じて適宜見直しが必要です。
とくにレイアウト変更や従業員数が増加した場合などは、避難経路の確保や設備の配置を見直したうえで、消防署へ変更後の計画を届け出ることが求められます。

消防法関係でオフィスレイアウトで気をつけるべき点とは?

消防法関係でオフィスレイアウトで気をつけるべき点とは?

オフィスレイアウトを考えるうえで、快適な作業環境の確保はもちろん重要ですが、消防法の観点から安全に配慮した設計をおこなうことも欠かせません。
以下のポイントを押さえて、安全と機能を両立したレイアウトを目指しましょう。

パーテーションの設置と高さに注意

集中力アップやプライバシー確保のために、オフィスではパーテーションを活用することが多くなっています。
しかし、レイアウトや高さを誤ると、消防設備が本来の機能を発揮しにくくなる場合があります。
パーテーションで空間を区切りすぎると、煙や熱が感知器に届きにくくなり、火災発生の早期発見が遅れるリスクがあるのです。
また、スプリンクラーの散水を遮断してしまう恐れもあるため、設置場所や高さを決める際は、ビルやオフィスの防火管理者や専門業者と相談しながら検討しましょう。
必要な通路幅を確保し、非常口や消火器へアクセスしやすい動線を確保できるよう設計することがポイントです。

火災報知器の位置とメンテナンス

オフィスレイアウトの変更やパーテーションの追加などで、火災報知器が適切に機能しなくなるケースがあるため注意が必要です。
レイアウトを変えた結果、火災報知器がパーテーションや大型の棚で隠れてしまったり、風の流れが変わって煙が届きづらくなったりすることがあります。
レイアウト変更前後で火災報知器の位置や作動状況をチェックし、必要であれば増設や移設を検討しましょう。
法令で定められた定期点検だけでなく、オフィスを移転・拡張したタイミングでも動作確認をおこなうと安心です。
とくにバッテリー式の報知器を利用している場合は、バッテリー寿命にも注意を払いましょう。

避難経路の確保と周知

火災発生時、従業員や来訪者が安全に建物から脱出できるよう、避難経路は常に確保されていなければなりません。
非常口や通路は、パーテーションやオフィス家具で塞がないようにしましょう。
ガラスパーテーションなどを導入する場合も、配置により出入口がわかりにくくならないよう工夫が必要です。
また、避難経路は広めに取っておくと、緊急時の混雑を緩和できます。
避難経路や非常口には誘導灯を設置し、日頃からわかりやすい表示をしておくことが重要です。

まとめ

企業やオフィスにおいて、消防法とは火災発生時に従業員や顧客の安全を確保するための法律です。
オフィスでは消防法によって「消防設備の設置」「防火管理者の選任」「消防計画の作成」が大きく義務付けられています。
レイアウトを検討する際は、デザインや業務効率のみならず、消防法で定められている要件を踏まえた安全対策を忘れないようにしましょう。