賃貸の事務所や店舗の内装工事のABCの区分について!違いや注意点も解説

賃貸の事務所や店舗の内装工事のABCの区分について!違いや注意点も解説

事務所や店舗として使う目的で賃貸物件をお探しの方なら、内装工事の内容や費用も気になるのではないでしょうか。
内装工事がABCの区分で異なる設定があるのを知らないままでいると、思わぬ不利益を被るおそれがあります。
この記事ではそれぞれの概要と違いにくわえて注意点も解説するので、賃貸物件での事務所や店舗の開設を予定している方は参考になさってください。

賃貸物件の内装工事におけるABCの区分とは

賃貸物件の内装工事におけるABCの区分とは

工事の打ち合わせでは、A工事・B工事・C工事などの建築業界での専門用語が使われますが、耳慣れない言葉に戸惑う方もいるでしょう。
ABCの区分をあいまいなままに契約を結んでしまうと、想定外の金額を請求されるおそれがあるので注意が必要です。
内装工事の区分の概要と、入居者が負担する費用がどのように定められているのかを解説します。

内装工事の区分とは

事務所や店舗を賃貸物件で開設する際には、そのままの状態で使用できない場合がほとんどであるため、内装工事が必要です。
賃貸物件では、建物の貸主による工事と借主による工事の線引きをしなくてはなりません。
この線引きによる区分を、A工事・B工事・C工事とするのが一般的です。
誰が施工会社を選定し、誰が費用を支払うのかを定めています。
この線引きは原則的に貸主が決定しますが、借主も事前に内容を確認しておきましょう。

区分による入居者の負担の有無

内装工事には、物件を貸し出せる状態にするためのものと、事務所や店舗を開設するうえで必要となるものがあります。
建物の躯体部分や共用施設に関係するものはA工事、入居者が発注して実施する専有部分の工事はC工事です。
B工事は入居者の要望で実施しますが、建物全体に関わりが生じる内容であるため、貸主が実施します。
建物に被害や影響を及ぼす可能性があったり、他の区画や共用部に連動していたりする内容の場合は、貸主が施工会社を選定します。
入居者が料金を支払うのは、B工事とC工事です。
B工事は貸主が施工会社を選んで実施しますが、入居者の希望に基づいて発生する工事であるため、費用を支払わなくてはなりません。

原状回復に関する工事区分

テナントを借りるときには、入居前と同じ状態に戻すよう原状回復が義務付けられている場合がほとんどです。
B工事・C工事で変更した部分は、基本的に元の状態に戻してから退去しなくてはなりません。
国土交通省のガイドラインでは、経年劣化や自然消耗には原状回復義務が発生しないとされています。
しかし、テナントの場合は一般の賃貸物件と異なり、物件の使い方がさまざまであるため、すべて借主の負担になるのが一般的です。

賃貸物件の内装工事におけるABC区分の違いと特徴

賃貸物件の内装工事におけるABC区分の違いと特徴

工事の発注・施工会社の選定・費用の負担を誰がおこなうのかは区分で異なるため、それぞれの違いを把握しておきましょう。
それぞれの特徴と工事の具体的な内容を解説します。

A工事の特徴

A工事の特徴は、発注・費用負担・施工会社の選定をすべて貸主がする点です。
内容は建物の外壁や屋上、共用のトイレやエレベーター・通路・階段など、建物本体に関わるもので、消防設備や排水設備の工事も含まれます。
建物の資産価値を維持する目的で実施されるため、施工会社の選定や費用を支払うのは建物を所有する貸主です。
当然ながら所有権は、建物の所有者にあります。
A工事の施工においてテナントの借主が関わるケースはほとんどありませんが、テナントを利用するにあたって、共有部分で気になる点があれば事前に相談しておきましょう。
共有部分以外の専有部分であっても、建物の所有者に認めてもらえればA工事になる場合もあります。

B工事の特徴

B工事の特徴は、発注・費用負担が借主であり、施工業者の選定は貸主である点です。
専有部分の設備に関するものでも、建物全体に関わりがあると判断される場合には、B工事になります。
内容は、空調設備や排水・排気・防水に関する設備、分電盤など法律で建物に必要とされている設備の増設や移設に関するものです。
間仕切りを施したためにエアコンの吹き出し口を移設したり、火災報知器などの防災設備を設置したりするのもこれに該当します。
借主の希望で建物の設備や仕様を変更するため、費用は借主が支払います。
費用を負担するのは借主であっても、設計・施工するのは貸主が選定した施工会社です。
建物自体の設備になるため、ほとんどのケースで所有権は貸主にあります。

C工事の特徴

C工事の特徴は、発注・費用負担・施工会社の選定をすべて借主がする点です。
内容は、クロスの張り替えや照明器具の設置・電話工事・インターネットの配線工事など、原状回復できる部分が対象です。
施工による建物全体への関わりがないテナント部分の工事であるため、所有権は借主にあります。
施工会社を自分で選定できるので、複数の施工会社から見積もりをとって比較して検討したうえでの決定も可能です。
金額を安く抑えられる可能性が高く、直接交渉できるため、やりとりもスムーズに進められます。
借主が費用を負担する施工のうちで、C工事の割り当てが多いほど出費を抑えられるでしょう。

賃貸物件の内装工事で気を付けるべきB工事の注意点

賃貸物件の内装工事で気を付けるべきB工事の注意点

ABCの区分のなかで、トラブルになる場合が多く、注意する必要があるのはB工事です。
施工にかかる金額や契約時におけるB工事の注意点を解説します。

想定より高額になる場合が多い

B工事で気を付けなければならないのは、工事費が高額になる可能性が高い点です。
ほとんどの場合で、想定していた予算より大幅に高い金額を請求されます。
費用を負担するのは借主ですが、施工会社を選定するのは貸主です。
貸主は費用を支払わなくて良いため、施工会社と交渉して価格を抑える必要はありません。
複数の施工会社から見積もりを取り寄せたり、価格交渉をしたりなどはせずに、自分の建物の構造に詳しい施工会社を選定します。
そのため、借主が見積もった金額よりも、2~3倍も高くなるケースがほとんどです。

工事費の見積もり額を契約前に確認する

契約を結んでしまったあとでは、工事の内容や費用に納得がいかない部分があったとしても、訂正はできません。
期日がせまっていて時間に余裕がなく、B工事の見積もりを待たずに契約した場合には、あとから予算を大きく上回る金額を請求されるケースがあります。
契約前であれば交渉して金額を調整したり、納得がいかなければ契約を見送ったりもできますが、契約後に解約するのは困難です。
施工会社の選定はできませんが、B工事と同じ工程で他の施工会社に見積もりを出してもらいましょう。
契約前に、その金額を提示して交渉をすれば、当初提示された金額より安くできる可能性があります。

契約書に記載された区分の範囲を確認する

契約書に記載されたB工事の範囲がどこまでかをしっかり確認しましょう。
一定の範囲だけの場合もあれば、すべての範囲をB工事としている場合もあります。
どの部分の工事を希望するか、事前に相談して具体的な内容を確認しておくのが大切です。
予算を大きく上回っている場合は、A工事に切り替えてもらえないか交渉してみましょう。
貸主が納得すれば、B工事に指定されていてもA工事に変更して、その分の費用を貸主の負担にしてもらえます。

まとめ

賃貸物件の内装工事におけるABCの区分とは、発注・費用負担・施工会社の選定において、誰が実施するのかによって定められた分け方です。
A工事とC工事はすべてを片方が担当するためわかりやすいのですが、B工事では発注と費用負担は借主、施工会社の選定は貸主です。
価格交渉ができず費用が高額になるケースが多いため、契約前に見積もりをとり、契約書の内容を確認しましょう。