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事業用の物件における造作買取請求権について!行使できないケースも解説

オススメ貸事務所/貸店舗ノウハウ

代表取締役 出口哲男

筆者 代表取締役 出口哲男

不動産キャリア22年

私のモットーは愛と元気と勇気と希望を与える不動屋である事です。

事業用の物件における造作買取請求権について!行使できないケースも解説

事業用の物件を借りる際に、造作買取請求権を行使する方は少なくありません。
そこで今回は、造作買取請求権とは何か、行使できないケースはあるのかを解説します。
また、造作買取請求権の特約についても触れているので、現在お困りの方は今後の参考にしてみましょう。

事業用の物件における造作買取請求権とは

事業用の物件における造作買取請求権とは

そもそも造作買取請求権とは、どのような仕組みなのでしょうか。
以下で詳しく見てみましょう。

賃貸人の同意によって付加する造作

そもそも「造作」とは、建物に設置されている取り外し可能な設備を指します。
たとえば、エアコン、家具、畳などが挙げられます。
これらは、いずれも事業用物件において、すでに設置されているものですが、自由に取り外しができる設計です。
また、これらは賃借人の所有物です。
そのため、貸主の同意があれば、これらの造作を賃貸人に対して、買い取ってもらえるよう請求できる仕組みになっています。
この買取は、時価での取引として定められています。
借地借家法第3条にも記載されており、事業用物件を利用している方の間で度々利用されている仕組みです。
ただし、先述したように、付加については家主の同意を得ることが最低条件となっています。
同意がないものについては買取が不可となるため注意が必要です。
また、通常の場合、借主が設置した造作は撤去しなければならないルールがあります。
しかし、造作買取請求権はあくまでも例外的に利用できる仕組みです。

終了の際に利用できる

いつでも造作買取請求権を行使できるわけではありません。
行使できるのは、あくまでも賃貸借契約が終了するタイミングです。
そのため、貸主の同意があって設備を導入した場合でも、買い取ってもらえるのは契約終了の際のみとなっています。
造作買取請求権を行使するためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。
具体的には、「対象が造作である」「造作は賃貸人の同意のうえで付加している」「賃貸借契約が終了する」の3つです。
たとえば、権利を行使する際の対象が一般的に使われる家財道具や家電製品だった場合、買い取ってもらえません。
これらは借主が自分の意思で自由に購入するものであり、造作として分類されないためです。
畳、電気、水道などの設備については造作として分類されます。
また、襖やドアなども造作に含まれます。
いずれも「物件に必要不可欠な設備」として考えられるため、この点に着目すれば間違える心配はないでしょう。
さらに、これらが事業用物件に設置されていたとしても、それを賃借人が所有していることが要件となります。
3つの要件を満たしていれば、契約終了時に権利を行使して買取を請求できるのです。

事業用の物件における造作買取請求権を行使できないケース

事業用の物件における造作買取請求権を行使できないケース

造作買取請求権を行使できないケースもあります。
以下で詳しく見てみましょう。

価値が減少しないものは対象とならない

先述したように、造作として分類されないものについては、買取をしてもらえません。
そのため、権利を行使できない事態となります。
造作は、水道や電気設備など、物件を使用するうえで便益を与えるものとされています。
つまり、それらの設備がないと不便が生じたり、生活に悪影響を及ぼす可能性があるものです。
エアコン、畳、襖などの造作は、すべてこれらの条件に該当します。
しかし、造作として分類されない家財道具や家電製品は、たとえ建物に設置されていなくても物件の価値が減少しません。
机やテレビなどがあれば便利ではありますが、建物の使用状況において便益を与えるものとは見なされていません。
そのため、これらに対しては権利を行使できない仕組みになっています。
何でも買い取ってもらえるわけではないので、注意が必要です。

放棄する特約とは

賃貸借契約において、造作買取請求権を放棄する旨が記載されているケースがあります。
仮にこのような特約があった場合は有効とされます。
昔は、造作買取請求権は強行規定とされていました。
そのため、貸主と借主の間で異なる特約があっても無効と判断されていました。
したがって、平成4年以前に締結した契約の場合は、特約があっても無効とされ、買取の義務が課せられています。
しかし、平成4年8月に施行された法律では、これを任意規定とするよう定められました。
現在では、放棄する旨が特約に記載されている場合は、これが有効とされる仕組みとなっています。

請求権の考え方

通常の物件では、造作は収去が必要となります。
しかし、請求権の行使は例外的な措置です。
造作があると建物の利便性や需要が向上し、買取によってメリットが生まれます。
エアコンをはじめとする造作を取り外すには費用が発生し、事業用物件を本来の状態に戻すには多額のコストがかかります。
しかし、買取によって賃借人の所有物になれば、これらの費用を削減することが可能です。
もちろん、先述したように、費用がかかることを承知のうえで特約によって権利を放棄する方もいます。
このケースでは、退去時に起こりうるトラブルを回避するための対策と考えられるでしょう。

事業用の物件における造作買取請求権の特約について

事業用の物件における造作買取請求権の特約について

造作買取請求権の特約も知っておくべきです。
以下で詳しく見てみましょう。

平成4年8月1日施行

特約は、先述したように平成4年8月1日に施行された借地借家法において任意規定とされるようになりました。
旧借家法では任意規定ではなく、権利を行使された場合には必ず従わなければならないものでした。
以降、特約が有効とされるようになり、借主と貸主の間でトラブルが起こらないよう対策が講じられるようになります。
任意規定として考えられるため、現行法が適用されている契約については、請求権を放棄すると記載されている場合、権利の行使ができなくなる点に注意しなければなりません。
事業用物件を借りる際には、放棄に関する表記がないかしっかり確認する必要があります。
思い込みで設備を導入してしまい、退去時に買い取ってもらえなかった場合、資金計画が狂ってしまう可能性があります。
買取の有無はマネープランにも大きな影響を及ぼす重要なポイントなので、内容を確認しましょう。

利用上の注意点

権利を行使したい場合は、放棄に関する表記がないか、また要件を満たしているかをチェックする必要があります。
そもそも、買取してもらいたいものが造作に該当するのかどうかも確認が必要です。
現在は水道設備やエアコンなども対象となっています。
しかし、貸主からの許可を得ていないものについては対象外となります。
そのため、造作を導入する前に必ず貸主からの同意を得るようにしましょう。
たとえ造作として分類されるものであっても、貸主の許可を得ずに導入したものについては、買取対象外となります。
また、買取価格は時価で計算され、退去時のタイミングのみ有効となります。
たとえば、造作を買い替える必要がある場合、契約期間中に買い取ってもらうよう請求することはできません。
契約満了の際に退去する場合にのみ、買取請求が有効となります。この仕組みを理解したうえで、貸主と交渉してください。

まとめ

事業用物件における造作買取請求権は、造作を貸主に買い取ってもらえる仕組みです。
要件をすべて満たしていないと、買い取ってもらえなくなるので注意しましょう。
そもそも造作に該当するのか、貸主の同意は得ているかなどのポイントが重要です。


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